2018年10月25日

『地域の未来をどう創る~未来へ向けて私たちができること~』

◇泉正隆(いずみまさたか)氏 プロフィール◇
吉本興業株式会社常務取締役
株式会社よしもとクリエイティブ・エージェンシー代表取締役会長

1983年吉本興業株式会社入社。1988年名古屋事務所初代所長、1993年うめだ花月シアター支配人、 1994年銀座7丁目劇場チーフプロデューサー。『吉本印天然素材』『ASAYAN』などのテレビ番組制作を経て、 2000年より2011年3月まで、子会社(株)エス・エス・エム代表取締役社長。池脇千鶴や南果歩などの女優のプロデュース&マネージメント、ニューヨークやベルリン映画祭でも話題になったマネキンドラマシリーズ「オー!マイキー」、 クレイアニメ「人形芸人ドンと&ノット」の製作、モーニング娘関連のテレビ番組制作、『大阪物語』『ジョゼと虎と魚たち』など数々の映画製作を担当。2011年4月より(株)よしもとクリエイティブエージェンシー取締役エリアセンター長として、笑いの力で地域創生担当。2012年10月(株)よしもとクリエイティブエージェンシー代表取締役副社長。2016年6月より吉本興業株式会社取締役、2018年4月より吉本興業株式会社常務取締役、現在(株)よしもとクリエイティブエージェンシー代表取締役会長,エリア支社全体統括、福岡支社長を兼任。
『決断する事の重要性』

理事長
本日はお忙しい中、時間を調整していただきありがとうございます。本日の対談どうぞ宜しくお願い致します。早速ですが、決断する事の重要性というテーマでお聞きします。青年会議所とは毎年組織が変わりテーマも変わる組織です。私たちは今年度、剛毅果断をいうテーマを掲げています。剛毅とは強い意志を持って果敢に決断していきましょうという意味ですが、資料を拝見致しますと泉様は今までプロデューサーという立場でおられ新たな企画に挑戦されるにあたってどの様な想いで決断をされてきたのかをお聞かせください。

泉氏
ここに書いてある通り私は30代の時、数々の番組のプロデューサーとして番組制作に携わらせていただいてきました。毎週放送のあるテレビ番組に関しては、視聴者に飽きられないために企画の新陳代謝を決断しないといけないシーンが毎週多々あります。27年前の話ですが、チーフプロデューサー時代に東京では全く認知されていない大阪の若手芸人を東京に売り込むための『吉本印天然素材』という番組を10月に立ち上げた際、8月の段階でプロデューサーは私で決まっていたのですが、番組開始の2か月前にも関わらず出演する芸人や企画が全く白紙状態で、番組成立が危ぶまれる時がありました。しかし、せっかくいただいた新番組を立ち上げるチャンスを、「できません」というわけにはいきません。昔から吉本興業には「できません」と言ってはいけない文化があったのではないかと思います。ですから『わかりました。やります』と言った以上、吉本興業内やテレビ局や番組制作の関係者の方々を説得して無理繰りに新人の若手芸人を集めてやり遂げていました。「できません」ということを絶対言わない吉本の文化があったからこそ10月1週目のオンエアーに向けて、ぎりぎりまでベストを尽くし『吉本印天然素材』というグループを世に輩出する事が出来たと思います。

理事長
その部分は長浜青年会議所に通じるものがあると思います。何かをするときは長浜青年会議所には『イエスかはい。』しかないと言われます(笑)。私ども毎年まちづくり運動をやるのですが、今年は琵琶湖の竹生島でステージを設営し能の演目を開催しました。2日前に台風が来て波でステージの資材がなくなるトラブルがあったのですが、何とか資材をかき集め滞りなく実施することができました。チーフプロデューサー時代に私もよく見ていた『ASAYAN』の番組制作も手掛けられておられますが、その時も様々な決断をされてきたとは思いますが。

泉氏
そうですね。色んな事がありすぎてここではお話しできないことばかりですが。(笑)私の経験上、何の試練も葛藤もなく、何もかも順調に進む企画は、ほとんどがブレイクしないですね。ですが、必死になって考え、できない状況を何とか知恵を絞りみんなで協力して、必死で壁を乗り越えることが、実は企画をブレイクさせるために一番大事なことではないかと思います。普通に順調にできることは全然ブレイクせず、逆境の中どうにもならなくて追い詰められて、必死に考えて「えいやっ!」と決断して行ったことがブレイクした気がします。できないと思われていることを成し遂げた火事場の馬鹿力が渦の中心となり、世間も巻き込むブレイクに繋がったのではないでしょうか。失敗しても、次回につながるからまずやることに意味があると、まわりから言われることは、慰めにはなりますし、私も実のところ失敗を大小数々していますが、テレビ番組に関しては毎週が真剣勝負で、話題になり続ける企画を出し続けないと番組が終了し、一緒に制作している仲間が路頭に迷うことになるので、新企画に取り掛かる時点で、失敗するイメージは絶対にしませんし、失敗したくないので、すごく考えて、仲間と相談しながら、できるだけ世間をあっと言わせる可能性の高い施策をとり続けてきました。できないという言葉は絶対いわないし絶対にできるという意識をもって常に物事に取り組もうとしていました。

理事長
なるほど。普通にできたことはみんなが考えそうなことでもあるし、そうでないことを知恵を絞って動いてひねり出してきたもののほうが、やっぱり他にないオリジナリティがあるのでしょうね。私の本年の所信のテーマは剛毅果断です。剛毅は強い意志をもって、果断は果敢に決断し行動しよう、という意味です。どんな困難に当たっても強い意志をもってやり遂げることが、インパクトを与えるという意味では、今のお話は大変励みになります。番組プロデュースは今現在もされているのでしょうか。

泉氏
2000年頃から子会社の社長になり、テレビや映画などの映像コンテンツ制作を担当していました。本社時代は失敗して笑われるのが嫌だという思いがありましたし、さまざまなプレッシャーを乗り越えて高い目標に向かって頑張れるというのがありました。しかし子会社に移って好きなこと、やりたいことを映像作品にできる恵まれた環境の中では、社員の給料を確保する利益をだすこと以外にプレッシャーが特になかったので、企画の弾け方が小さくなってしまった気がします。大きい会社だからこそ恥をかきたくないし、同僚に負けたくないという気持ちもありましたし、そういう緊張感の中での作品作りに比べると、子会社の社長になって自分の面白いと思うものだけを作っていたのですが、なんとか小ヒットは出続けましたが、突き抜けて世間を巻き込むような作品は作れなかったですね。

理事長
泉様は相当負けず嫌いに感じられますが。

泉氏
負けず嫌いかも知れません。(笑)今になって、ある程度のバイアスがかかる状況を自ら作っていくのが大事だと考えています。ですから30代の頃が常にバイアスがかかっていて、一番色んな事がブレイクしていきましたね。40代になって子会社の社長になって、それから50代で本社に戻って来て、現場でなくずっと管理の側にいるので、切羽詰まった現場のプレッシャーも無い中、諸々ブレイクしていないのかも知れません。(笑)

理事長
青年会議所も40歳で卒業なので今が一番大切な時期だということですね。

泉氏
そうですね。体力も知力も充分な時でもあるし、青年会議所のOBや先輩方の圧に対して調整し、乗り越え、何かを成し遂げる経験が必要な時に、青年会議所の活動期間があるような気がします。先輩方がおっしゃられることやこれまでの常識など、それらを調整しながら乗り越える若いパワーが一番ある時で、失敗しても許される時が30代だと考えます。ですから40歳で卒業というのはよくできている組織だと思います。

理事長
先輩方からも青年会議所というのは最後の学び舎であるとよく言われるのですが、人の動かし方や地域の動かし方を確かに大いに学ばせてもらっています。経験・実績ではかなわなくても若いからこそできること、そしてそれをすることによって先輩方からも認められていく。そして卒業してからもそうやって学んだことを地域に還元していく、という循環を作っている点では、本当に良くできた組織だと思います。



『地域活性化とは』

理事長
それでは次のテーマにいきます。
女優のプロデュースや数々の映画製作を担当されたのちに、2011年4月より(株)よしもとクリエイティブエージェンシー取締役 エリアセンター長として、笑いの力で地域創生担当をされ、その時に「あなたの街にすみますプロジェクト」を開始されました。このプロジェクトの発案に至った経緯や笑いの力で地域がさらに活性化できると思った理由をお聞かせください。またなぜ地域活性がなぜ必要だったのかお聞かせください。

泉氏
私が考えたわけではなく2010年の秋ぐらいに弊社社長の大崎が、東京一極集中で地方が衰退するテレビ番組を見ておられて、何か吉本でできることはないかと考え、閃かれた企画です。当時も今もなんですが、東京、大阪には、売れて人気者になりたい芸人達が、全国から6000人くらい集まっているのですが、ほとんどがバイトをしながらチャンスをうかがっている現状のなかで、そんな芸人達の中に、地元に戻って笑いの力で、地元を元気にしたい芸人がいるのではないか。その芸人達がすすんで地方に戻ることで、Uターン、Iターン施策のPRに貢献できますし、地域で新たに活躍の場ができて、地域の人気者になる可能性も高く、笑いの力で地域を盛り上げてくれることによって、吉本興業としても地域活性にむけて貢献させていただけて、社会の役に立てるのではないかということがきっかけで、47都道府県に芸人と地域社員を一組ずつ配置するプロジェクトが始まりました。

理事長
始められた当初は地域のニーズや反響はどうでしたか。

泉氏
最初地域であいさつ回りをしても、ほとんど仕事をいただけず苦労しました。ほとんどの地域で、東京や大阪では、仕事がないから地方に落ち伸びて来たのではないかと少し距離をおかれていた気がします。また吉本が地方に来て何ができるのか?と疑問を呈する方々も多くいらっしゃいました。ですから最初に大々的に記者会見を開き、吉本と一緒に地域を盛り上げたいと考えてもらえる地域側の方に企画を募り、その時全国から100ほど企画が集まったと記憶していますが、軌道に乗り出したきっかけは、その応募された企画の中で、第一弾で採用された愛知県の犬山市観光協会さんの企画で、城下町の案内をお笑い人力車をやってくれないかという案件がうまくいったことがきっかけです。愛知県住みます芸人のサムタイムスという芸人が大きな声を出しお客様を載せて人力車をひくだけなのですが、静かな城下町を「姫こちらから見える本丸が一番でございます」などと大声を出して街中に声を響かせて案内するんですが、その昔言葉が街中に響き渡ることによって、あたかも昔の城下町にいるような臨場感が生まれ、観光客に大好評となり、そのことが新聞、テレビで多数取り上げられ、この評判が吉本と組むことを検討していた他県の観光協会や自治体につたわり、一気に全国各地でも笑いの力で地域活性化の展開が広がりました。

理事長
長浜青年会議所も地域活性化の観点から湖北都市圏創造構想を掲げています。湖北都市圏創造構想とは経済的な賑わいだけでなく文化をしっかりと継承し、このまちに住み続けたい、このまちをもっと良くしたいと思う地域愛をもった人に溢れ、このまちで生まれ育った子ども達がまたこのまちへ戻り未来を創る。そんな地域にこそ人が集うと考え3つの運動を展開しています。地域を活性化していくために当然地元の人間が引っ張っていかなければならないと思いますが、客観的に地域を見られて人々にどのようにしてほしいとか、こんなのがあればいいとかございますか。

泉氏
私たちは地域の方がどうしてほしいと言うよりかは、吉本の芸人は笑いの力はもっておりその場を盛り上げることはできますので、それをうまく利用して使っていただけたらと考えています。また吉本は地域に役立つ様々な機能をもっており、祭りを盛り上げるなど、全国へのPRだけでなく、例えば物産をアジアへ売りこむなども展開しておりますし、お笑いだけでなく、スポーツを通して健康増進イベントなど地域の課題を解決するための様々な企画を実施していますので、吉本の機能を使うことで双方にメリットがあり吉本が貢献させていただけることで地域が盛り上がっていければと考えています。どうすればいいというよりは、地域の方々と一緒になって地域全体の活気づくりのお手伝いができればと考えています。



『吉本興業と長浜青年会議所の将来の可能性』

理事長
吉本興業株式会社と公益社団法人日本青年会議所(日本JC)による包括提携を締結し、両者の持つ地域ネットワークエンタテイメント、発信力を融合させた新たな形での地域貢献に取り組みが始まりました。日本青年会議所と包括提携を締結したことによる今後の展望をお聞かせください。

泉氏
日本青年会議所はSDGsを積極的に取り入れられており、弊社も同様に笑いの力でSDGsの普及を積極的におこなっています。3月にJCIが開催された世界会議でもSDGsを取り入れた新喜劇や漫才をやりました。弊社にはSDGsをわかりやすく楽しく面白く伝えることのできる芸人が多数おりますので、SDGsの普及に関して、日本青年会議所と一緒に取り組んでいこうと考えています。その他にもお笑い大会開催など、全国各地の青年会議所と様々なコラボをさせていただいております。これからは地域活性化だけではなく社会問題も解決して地域のお役に立つ事業を起こしていく事も重要であると考えます。

理事長
長浜青年会議所も今年、青少年育成事業でSDGsを使った事業を実施しました。国際協力機構が運営しているなごや地球広場で世界のことを学び、そこにある問題と自分たちが住んでいる地域の問題をリンクして考えさせ、その解決策を考えるという事業です。そういったことを身構えることなく考えるような環境を作っていかなければならないと思いますし、お笑いを使って学ぶというのもその入口として有効なのかな、と思いました。SDGsはこれからのトレンドとして広がっていきそうですし、理念も素晴らしいですから、活用していきたいと思っています。

理事長
最後になりますが、長浜青年会議所が湖北地域で吉本興業と連携し推し進めていきたいプロジェクトの提案ですが、湖北地域にはまだまだ世間には知られていない自然豊かで魅力的な場所が多数存在します。そこで長浜青年会議所は昨年度に湖北八景を精選し決定し、湖北に新たなシンボルを創出する運動を推し進めております。そこで、その八箇所で定期的に吉本さんと連携しながらイベントを開催し笑いの力で人を呼び込み、地元の良さを全国にアピールし地域活性化に繋げるのはいかがでしょうか。

泉氏
面白い提案ですし一度やってみる価値はありますね。大阪から長浜までは距離があるので経費の問題がありますが(笑)。ですが、単発的なイベントだけではなく継続的な活動ができるほうが地域活性化に繋がるとは思います。例えば長浜城や竹生島を舞台に笑いを盛り込んだふるさと劇団をつくるなどは面白いと思います。吉本は場所に付加価値を生むことが得意なので、青年会議所さんと連携しながら地域を盛り上げ人が呼び込めればと思います。今後もご相談させていただければと考えています。

理事長
長浜青年会議所も吉本興業様と連携しできることを提案していきたいと思います。今後とも宜しくお願いいたします。本日はありがとうございました。



理事長

 

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